はじめてのオーダースーツ

銀座の社長 × ペコラ銀座

日本でも有数のテーラーとして知られている
「ペコラ銀座」さん。
縁あって、銀座の社長(高橋一)が
初めてオーダースーツを注文することに。
生地を選ぶところから、出来上がりまで
全13回にわたって掲載いたします。

ペコラ銀座について

目次

第3回
父親の測り方が合っていた。

高橋:
お父さまから習ったんですか?
佐藤:
そうなんですよ。
私、わざわざフランスまで行って
裁断学校にも
通っていたんですけどね(笑)
ペコラさんのところでは、
裁断は教わらなかったんです。
でも、元の型紙を
見せてもらっていました。
たとえば、僕が引いたものを
ペコラさんにその場で直してもらうと
「あ、こういうイメージで
やってるんだな」と
わかるというか、
僕なりに解釈するじゃないですか。
そういうペコラさんの
思考を読む教わり方ですね。
それを何度かしていました。
ペコラさんの場合、ものすごい口下手で
「俺はこうやる」とかの説明が
一切できない人なんで(笑)
それもふつうにマジックで
ゆっくりと書いていくんですよ(笑)
チャコでキレイにまっすぐ引くとか、
そういうのではなくて、
ちょっと揺れたような感じで、
マジックで「うーん」といって(笑)
寸法を見るわけではなく、
全部頭の中で想像しているんですね。
肩幅はこれくらいで、
これくらいのいせ込みで、
という感じで。
あういう芸当はちょっとなかなか、
できるものじゃないです。
そういうやり方で直してもらって、
だいたい同じイメージにするためには
どうしたらいいんだろう、
ということをしていました。
父親の測り方が合っていた。
高橋:
ペコラさんの背中を見て
体得したんですね。
佐藤:
話を戻すと、
パリで教わったやり方
「ダルー方式」は、
疑問を持つ部分が多かったのです。
それで、日本に帰ってきて、
父親の測り方(ショートメジャー方式)
を見たら
父親のやり方がいいなと思って。
この方が自分にも
合っているなと思ったんですね。
高橋:
フランスに行って勉強されて
帰ってきたけども、
結局はお父さまのやり方を、
自分なりに解釈して。
佐藤:
ただ、全部が父親のやり方
というわけではありません。
たとえば体に合わせる寸法の取り方は
父親に教わったもので、
形や、シルエット、縫い目の位置など、
いわゆるデザイン的なものは、
ペコラさんのやり方のイメージを
持ってきてという感じですね。
お客さまの体型を把握するための
システム的なことは
父親から教わった感じです。
高橋:
なるほど。
佐藤:
本当に偶然ながらも良かったですよ。
フランスのやり方は、
たとえばメジャーを3、4本使って
姿勢とか、ウエストラインを
地面まで測ってやるんです。
いろんな道具を使って教わりました。
ただ、そのやり方だと、
学校の教科書的な
やり方なのかなと思って
父親から教わったショートメジャーの
やり方を使っています。
父親の測り方が合っていた。
高橋:
フランスでは、今でもその方式を
取り入れているんですかね?
佐藤:
それがこの間なにかで見たときでは
やってたんですよね(笑)
本当に道具を使う人がいるんだと思って。
「うーん」と思いましたけど(笑)
それはそれでこだわりなんでしょうね。
でも私が通っていた学校は、
いちばん歴史の長い学校で
そういう意味では
すごく意義があったかなと思います。
それにレディースのときは、
フランスの測り方を参考にしながら
採寸しますね。
高橋:
そうですか。
レディースも仕立てるんですね。
佐藤:
注文の数は少ないんですけどね。
高橋:
採寸していただいたあとは、
どういう工程に?
佐藤:
デザインです。 シングルとダブルでは
どちらがいいですか?
高橋:
シングルでお願いします。
佐藤:
高橋さん、
アイビーが好きなんですよね?
高橋:
はい、基本はアイビー好きです。
なので、ラペルの大きいスーツは
あまり着ていません。
佐藤:
そうですよね。
基本的にはアイビーに合わせて
作ろうとは思っています。
父親の測り方が合っていた。
高橋:
ラペルが大きくなければ、
あとは佐藤さんにお任せします。
佐藤:
わかりました。
ハウススタイル的なバランスと形で
襟幅を細く作っていこうと思います。
高橋:
ハウススタイル…?
佐藤:
うちは基本的に
ビスポークのテーラーなので
これが絶対に
うちのハウススタイルです、
というものはあまりないんですけど。
高橋:
ああ、そういう意味ですね。
佐藤:
ボタンは二つボタンの方がいいですか?
高橋:
はい、二つボタンにしてください。
佐藤:
フラップはあった方がいいですか?
高橋:
きちんと着るんでしたら、
あった方がいいんですか?
佐藤:
いえ、そんなことはないです。
高橋:
そうでもないんですか。
うーん、どっちがいいんだろう。
佐藤:
たとえばミラノでは、
フラップをつけないお客さまが
多かったです。
デメリットとしては、
どうしても時間とともに
ポケットが空いてきやすいんですよね。
そのときにフラップがないと、
よりペローンと見えやすくなっちゃう。
父親の測り方が合っていた。
高橋:
うんうん。そういうのもありますよね。
佐藤:
だから、それを気にするとなると
フラップはあった方がいいと思います。
高橋:
あった方がいいかなあ。
佐藤:
フラップをつけるとして
斜めがいいですか?
それとも真横の方がいいですか。
高橋:
そうだなあ。
佐藤さんが抱いてる
全体のイメージからして、
どっちの方がいいですか?
佐藤:
まあ、そうですね。
はっきりいうと、高橋さんの場合は、
どちらも似合うかなと
思っているんですけど(笑)
ただ、斜めになってるものは、
着慣れていないと違和感がある。
高橋:
うん。
佐藤:
おそらく真横の方が、
着やすいかなと思います。
高橋:
では、そうしましょうか。はい。
佐藤:
あと、チェンジポケットは
いらないですか?
高橋:
それはいらないです。
佐藤:
わかりました。はい。

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