はじめてのオーダースーツ

銀座の社長 × ペコラ銀座

日本でも有数のテーラーとして知られている
「ペコラ銀座」さん。
縁あって、銀座の社長(高橋一)が
初めてオーダースーツを注文することに。
生地を選ぶところから、出来上がりまで
全13回にわたって掲載いたします。

ペコラ銀座について

目次

第10回
美しさと動きやすさの
バランスが難しい。

佐藤:
芯地も手で作っています。 芯地を何重にも縫うんですが、
専用のミシンで作ることが多いです。
トントントンと柔らかく縫う
ミシンがあるんですけど、
それでもやっぱり
ミシンはミシンになってしまいます。
それを何重にするときに
分けて縫ってるんですよ。
たとえば、ここに白糸と黒糸が
ありますでしょう。
この白糸だけで一度縫ってから、
黒糸をあとでまたもう一度
足してるんですよ。
美しさと動きやすさのバランスが難しい。
高橋:
それはその方が…
佐藤:
柔らかくて、軽くできるからです。
しかも形を立体的にできるんですよね。
そういう見えないところの手間が、
やっぱり影響してきます。
ふつうは3枚一緒にミシンで
トントントンと縫うことが多い。
さらに言うと、薄くて
「馬尾(バス)芯」と言われてる
馬の尻尾を中に入れています。
昔からある生地です。
馬尾芯を使うことで、この立体感に
ハリが出るようにしています。
高橋:
馬の尻尾の毛?
佐藤:
はい、それを「馬尾芯」と呼びます。
今は、化繊に代用されることが多いです。
日本に入荷されることが
少なくなってきてるんですね。
美しさと動きやすさのバランスが難しい。
高橋:
そうなんですね。 ほんと今まで着ていたスーツとは
別ものという感じがします。
これは、ほんと別のものですね。
 ー:
スーツではないと。
高橋:
スーツだけど別ものだね。
既成のスーツと、このオーダースーツは。
パターンオーダーというのも
ありますけど、
パターンオーダーは、
ほぼ既成服に近いんですよね?
佐藤:
パターンオーダーはどちらかというと、
受注生産みたいなところがあります。
細かく対応できる部分が
オーダーとは違います。
それからパンツですが、
既製服は、どちらかというと
立っているときに
シルエットが綺麗に見えることを
重視しています。
僕はどちらかというと、
動いたり座ったりしてるときも
ラクな作りにしたい。
大事なのは、その両方の
バランスですね。
今回の上着は、動きやすさと
綺麗なシルエットが、
マッチしやすいんですが、
パンツは難しいんです。
ラクなパンツは、
シルエットが悪くなります。
シルエットを重視すると、
動きやすさが悪くなります。
足が上がりづらいとかです。
パンツは、そのバランスをとるのが
ものすごく難しい。
オーダーの場合は、どちらかというと、
動きやすさを重視しながら、
もちろん綺麗なシルエットにする。
そこを注意していますね。
体型でも変わってくるので。
美しさと動きやすさのバランスが難しい。
高橋:
太れない(笑)
佐藤:
高橋さんは、スタイルがいいですよね。
お尻もぐっと上がっている。
もっと平たい人とかいます。
私もそうですが。
高橋:
いやいやいや(笑)
佐藤:
高橋さんは
キレイなお尻だと思います(笑)
高橋:
そうですか(笑) なんか着ていたら、
アメリカの大統領になった
気分になる(笑)
芝田:
高橋さん、ボタンはどうしますか?
オススメはイタリアで買ってきた
こちらのナットボタンです。
美しさと動きやすさのバランスが難しい。
高橋:
ナットボタン…
佐藤:
地味な感じなんですけども、
イギリスでも、イタリアでも、
ボタンはゴテゴテしないで
シンプルなものを
オススメしている仕立屋さんが多いです。
その方が品が出ます。
高橋:
ボタンが主張しない感じですか。
佐藤:
はい。
高橋:
いいんじゃないですか。いいと思います。
佐藤:
これはミラノのボタン屋さんで
買ってきてるものです。
ナットボタンはもちろん
日本でもたくさん売ってるし、
いろいろあるんですけど、
それぞれほんのちょっと
形とか色合いがやっぱり違うんですよ。
その色合いの出方も、
メーカーによって違う。
このボタンは、ミラノの仕立屋さんの
90%が
買いに行ってるお店で
仕入れてきたボタンです。
芝田:
たぶんボタンの削り方がイタリアの方が、
色気があります。
美しさと動きやすさのバランスが難しい。
佐藤:
かっこいいんですよね。
高橋:
へえ。それはわからないけど(笑)
違うんですね。
佐藤:
ボタンホールの感覚とか、
エッジのところとか、
そういう細かいところが、
違っていてかっこいいなと思います。
高橋:
そんなところまで違うんですね。
佐藤:
そうなんですよね。
いろんなところが違います。
糸も、違いますし。
あまりこだわり過ぎても
あれなんですけど(笑)
高橋:
そうなんですね。
このボタンでいいと思います。

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