はじめてのオーダースーツ

銀座の社長 × ペコラ銀座

日本でも有数のテーラーとして知られている
「ペコラ銀座」さん。
縁あって、銀座の社長(高橋一)が
初めてオーダースーツを注文することに。
生地を選ぶところから、出来上がりまで
全13回にわたって掲載いたします。

ペコラ銀座について

目次

第9回
「着たときの軽さ」を心がけている。

高橋:
こんにちは。
本日もよろしくお願いいたします。
佐藤:
こちらこそ、
よろしくお願いいたします。
「着たときの軽さ」を心がけている。
佐藤:
いいじゃないですか。
高橋:
本当ですね。
いい感じです。
佐藤:
ウエストはどうですか?
高橋:
まったく問題ないです。
佐藤:
いつものスーツより、
少し深くなってると思います。
テーパードをストレートにしてみました。
こちらの方が似合いますね。
高橋:
いいんじゃないですかね。
ストレートにしてよかったですね。
佐藤:
縦が綺麗に出て、脚が長く見える。 
腿の太さもちょうどいいと思いますね。
「着たときの軽さ」を心がけている。
佐藤:
ベストの丈は、
ほんのちょっと短くしますね。
高橋:
すごいですね。
なんか着てないみたい。
佐藤:
重たい生地ではないんですが着やすい。
そして、重厚感が出る。
高橋:
ほんとにすごく軽いです。
ジャケットを着てる感覚がない。
佐藤:
どこか一点に重さがかかると
重く感じてしまう。
ちょうどよく体にフィットすると
軽くなります。
高橋:
(納得するように)ふーーん。
こんなに軽いものなんですか。
オーダーで作るというのは。
佐藤:
イタリアの作り方は
そこが特徴でもあります。
イギリスは、
硬くて重たいイメージがありますが、
イギリスでも、ちゃんとした仕立屋さんで
作っているスーツは
どれもすごく軽いです。
高橋:
なんでこれほど軽いんですか。
佐藤:
それは「作り」ですね。
昔、ヨーロッパでは、
スーツを着たまま朝から夜まで
過ごしていたんです。
しかも、生地は今よりもっと重たい。
そうなると、
よほど仕立てをよくして軽くして、
着心地をよくしないと
1日着つづけることは大変です。
高橋:
なるほどね。
今回の生地の重さは
一般的な重さですか?
佐藤:
一般的な重さですね。 芯地はどちらかというと
普通の既製品よりも逆に硬いというか、
しっかりしている。
型崩れができるだけしないように、
芯地を作っているので。
だから、
ペタッとしていないと思います。
立体感があるというか。
高橋:
そんな軽そうには
見えないんですけどね。
佐藤:
そうなんですよね。
見た目は重厚感があるかな。
高橋:
重厚な感じがありますね。 これはシーズン的には
いつがよろしいんですか?
佐藤:
どちらかというと秋冬ですね。
ただ、真冬の時期に着ると、
ちょっと寒いかもしれないです。
でも、ベストがあるので
ちょうどいい具合ですかね。
高橋:
袖の長さというのは、
だいたいこれくらいですか?
「着たときの軽さ」を心がけている。
佐藤:
ちょっと左手の袖が短いので
すこし長くしてもいいかもしれません。
それか、これは好みですが、
全体的にクラシックな感じなので
1センチから1.5センチくらい
シャツが出るようにしても良さそうです。
その方が清潔感が出る気がします。
高橋:
そうですか。 でも、ほんとに軽いなあ。
佐藤:
出来上がると、もっと軽く感じると思いますよ。
高橋:
ほんと着てないみたいです。
 ー:
この軽さは、
佐藤さんの特徴でもあるんですか?
佐藤:
特徴というか
「目指してるところ」ですかね。
ただ、目指している軽さは、
「数字上の軽さ」ではなくて、
「着たときの感覚の軽さ」を
目指しています。
高橋:
着た瞬間にすぐそれは体感しました。
「着たときの軽さ」を心がけている。
佐藤:
実際、見た目の重厚感や、
芯地の具合もあるので、
単純に重量の重さ、軽さというのは、 
あまり意味がないと思っています。
肩の立体感を出すことや、
着衣中の洋服が浮いているような感覚は、
仕立てる上で大事なところです。
でも、作るのがとても難しい。
洋服が、身体全体の
どこに当たっているわけでもなく、
ほんの1mmくらい浮いてる空間があると
重さって感じにくいんですよ。
だいたい重く感じるときというのは、
首や、首の後ろの付け根の方、
肩のところなど、
ある一部分に必ず重さがどーんと
乗じている状態なんです。
そうするとそこに荷重がかかり、
重く感じます。
そこにできるだけ空間を作るように
立体的にするっていうのが
難しいんですが、
ヨーロッパの長い歴史の中で、
だんだんとできるようになってきた。
そこはヨーロッパの技術の
素晴らしいところだと思います。
そういう作りを
きちんとできればできるほど、
着たときに軽く見えるし、
見た目も美しくなります。
高橋:
なるほど。
どこかに力点が置かれると
そこが重たく感じてしまう。
佐藤:
洋服自体が軽かったとしても、
着心地が悪ければ重く感じてしまうので。
高橋:
ペコラさんの特徴でもあるんですか?
佐藤:
無口な人だったので、
口では言いませんけども、
そういう作りでしたね。
見習い時代、誰もいないときに
ペコラさんが作った服を
着たことがあります。
そのときにこれまで体験したことのない
軽さを感じたんですよ。
その着心地には驚きました。
「着たときの軽さ」を心がけている。
高橋:
ほんと今まで感じたことのない軽さです。
佐藤:
とくにイタリアは上手だなと思います。
僕が若いとき、
初めてジョルジオ アルマーニを
着たときに
「なんでこんなに軽いんだろう?」
と驚きました。
それで、ペコラさんの服を見たときに、
こういう技術がアルマーニをはじめとした
イタリアのテーラードに息づいてるから、
イタリアの既製服は軽いんだなと
思いましたね。
 ー:
このスーツが出来上がったら、
他のスーツをなかなか
着られないかもしれないですね。
高橋:
ぜんぜん違うからね。
別ものだもんね。
佐藤:
はい、別のものですね。

目次